目を閉じると、14歳の結人とわたしが笑っていた。
目を開けると、空が黒になりきらないように無数の星たちが光っている。

その姿に無性に感傷や寂しさが押し寄せてきて、
こんな星の夜は、すべてを投げ出したってどうしても君に会いたいと思った。








スターフィッシュ
   Polaris...5






夢を見ていた。あの頃の思いをそのままに、2人で笑っている。
わたしの隣に結人が立ち、結人の隣を私が歩いている。
目が覚めると涙が出ていて、少し細かく瞬きをして目をこすった。


今でも、夢を見ているんだと思う。
あの星を見上げては夢を、御伽噺を。
毎晩同じ夢を、結人もそうだと信じてひたすらに暗闇を見つめ続けたわたしの目は、 少しだけ 黒が深くなった気がする。


ああ、今でも。
おとぎ話の続きを見たくて、頭に心が追いついて来てくれない。
この空気がそうさせるんだろうか、あのころと同じ、星の居場所が。

いつになったら手放せるんだろうと半ば諦めの気持ちに変わっていた。
離してあげなくちゃと思うこと自体が、離れることを拒否しているんだと気づいてしまったから。

イギリスで2年間も、2年間もあの星をずっと見ていた。
まるで衛星のようだ。結人がいないから、見えないから、見ないから、思い出すのをやめたから。
あの星がなくちゃもう全部ぜんぶ消えてしまいそうだった。

やわらかい思い出を両手に優しく抱きしめていたのに。
何度かのつらいことに体を強張らせて?
思い出のやわらかさは水のようで?
きつく抱きしめて潰れてしまった。
手の隙間から零れ落ちてしまった。



いっそこの空が真っ暗闇になってくれたら、どんなにいいだろう。
音も光も吸い込んでくれたら、どんなに泣き叫べるだろう。



でも、そんなはずはなくて。
他のすべての星が死んでも、あの星だけは死なないと思った。
息も絶え絶えになっても、最後まで光り続けることを選ぶだろうと思った。








もう1度目を閉じてみる。

こんな星の夜に君がいてくれたなら、何を話そう。




















瞬きするような長い季節が来て
呼び合う名前がこだまし始める




聞こえる?






N E X T



060603