少し前を歩く後姿をじいっと見つめて歩いた。
目つきも悪くて姿勢も悪そうに見えるけど、なんでかいつみたってこの背中はしっかりしていて
安心してしまう。


「なんかさあ、」
「あー?」
「なーんかさーあ〜」
「なんだよ」


背中が見えなくなって、面倒くさそうにこっちをみる目とぶつかる。
あたしはきっとにこにこ笑っているに違いない。
三上の表情がゆっくりと訝しげになっていく。
それでもあたしは緩んだ頬を引き締めようともせずに続ける。


「三上って部活のあと、いいにおいがする」



汗臭くないの、なんでだろう?
と独り言みたいにつぶやくと、訝しげだった顔はいつの間にかお得意の
優しい嘲笑に変わっていた。


「やっぱりお前変態だな」


ふっと鼻で笑われているのになんとなく嬉しくなってしまって困る。
ああ、やっぱり好きだわ、なんて思ってしまって、それと同時にやっぱりあたしってばかなんだわとも思う。
嘲笑われてある意味正解かも。



「三上くんサイテー。いっかい死んでください」

「いやいや、それは無理だろ」
「なんで?」



「だってお前絶対泣くじゃん」



ほんとにもうこの男はなんなの?!恥ずかしくないの?気づいてないの?
もしかしたらあたしよりもおばかさんなの?
そんなことを頭の中でぐるぐる。でもあたしの顔は素直だから絶対ニコニコしてるに違いない。
世界一おいしい林檎みたいになってるんだわ。
それを必死で隠すために俯いているわけなんですが、もちろんバレバレで頭上から
くっくっとこらえた笑いが降ってきて、なんだかますます嬉しいような、悔しいような。

昔からの原則によるとあたしはきっとこれから先も勝てっこないんだろうけど、
ささやかな抵抗もしてみたくなる。



「じゃああたしが死んだら三上は泣かないの?」

「俺がお前より長生きするわけねえし」



ホント、ああいえばこういうですよね!
ちょっと睨んでやったら、おーこえー!だって。




「ほれ、行くぞ
「はあい」




荷物を奪われて手ぶらになったあたしは、とことこと小走りで
三上についていく。
やっぱり物言わぬ背中はしゃんとしていて、安心できるけれども
目の前に立ちはだかる壁のようでもある。

今はまだ1度も勝ったことがないけど、いつかは1回くらい勝てる日が来るはず。
だってこれから死ぬまで一緒にいるだろう人が相手だから。













070306